本末転倒
あー、読み終えちゃったよ。
宮部みゆきの「桜ほうさら」上下2冊。それぞれ400ページ以上あるから、けっこう長いこと楽しめると思ってたのに。
昨日、結局、家のこと以外は何もせず、テレビもほとんど見ず、11時ごろに最後のページを読んで、くっそー、巧いなあとため息をついた。
要らない解説まで読んじゃった。読むべきじゃなかった。せっかくの余韻に雑音が入っちゃった。
まあ彼女は東京の江東区深川の生まれだから、東京の言葉を話すのだろうけれど、江戸言葉はやはり研究をしたのだろう。おまけに武士の言葉と町人の言葉、町人でも大きな商いをするお店(たな)の言葉と長屋に住む職人のとでは違うはずだ。
彼女の会話文の分かりやすさを見ると、きっと今の言葉を混ぜているのだろうと推察する。
地の文には江戸の情緒を感じさせる言葉が混ざっている。
それと彼女一流の比喩や形容の仕方。
例えば、嘘というのは釣り針に似ている、返しがついていて容易に抜けない、抜こうとすると自分自身を抉(えぐ)ってしまう とか。
一寸刻みに死んでゆく とか、笑みも涙もなく肌の下ですべてが凍っている というような表現。
ストーリーを追っかけて、表現方法に目をとどめている暇があまりなかったんだけど。
落ち着いたらもう一度読み返してみるつもりではあるが、今じゃない。
禁断症状は出ていないと書いたが、この本があったからなんじゃないかな。
一昨日の朝、ちらと読んだだけで、わたしは舌舐めずりをしていたんだ。
美味しいものは時間を掛けてゆっくりと楽しむべきなのに、餓鬼のように喰らいつき、むしゃむしゃごくりと食べちゃった。まだ、骨に美味しい身が残っているのに。
さあて、今日これから、何をしよう。
実は傍に1冊、本がある。10年ほど前に買った2冊の本の残りの1冊だ。
1冊目は買ってしばらく辞書と首っ引きで読んだ"Finding Forester"という本。
邦題は「小説家を見つけたら」で、作者はジェームズ W エリソン。ショーン コネリーが制作主演で映画にした。彼は気難しい小説家の役で、黒人の少年との友情の話だ。
映画は見ていないが、とても感銘を受けた。それは間違いがない。
で、2匹目の泥鰌を と読み始めたのが、V .S. ナイポールの"Miguel Street"。
ところが、34ページで止まったままになっている。もうどんな話か忘れちゃってる。
1冊目同様、辞書で調べた意味を鉛筆で書きこんでいる。1から17に分かれていて、それぞれにタイトルが付いている。1Bogart 2 The Thing Without a Name というように。タイトルごとに8ページほどの詩のような雰囲気の文章で、貧しい人々の暮らしが、”I"という人の目を通して語られる。概ね退廃的で、建設的ではないが、人間臭くて、ある意味あたたかい。
今、調べたら、ナイポールは"In a Free State"という小説(たぶん)でノーベル文学賞を受賞した作家だった!
ダメだ、こりゃ。
わたしには荷が重すぎるよ。
というわけで、明日から読む本がなくなっちゃった。
また、ブックオフに行こうか。
いやいや、本にのめり込んだのでは本末転倒だ。
少なくとも、明日はまたブログ書きます。