テノール歌手
ジョン・健・ヌッツォというテノール歌手をご存じだろうか。
東京出身のアメリカ人で、2000年にウィーン国立歌劇場でデビュー、2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」のテーマ曲を歌い、一躍有名になった。
そのころ買ったCD”Tenorissimo”を先日から何度も聴いている。
クラシック以外の曲も入っていて、アソートメントが楽しい。
2005年に買ってすぐCDのセロファンを取って解説と歌詞を書いた小冊子を出して開いた。
がっかりした。
1ページ目に大河の主演だった福山雅治の文と一緒に写った写真が載っていた。
有名になるのがまず第一だと考えているんだ。
しかし、CDを聴いて、許せるって思った。
若々しくてのびやかな声。ラテン語、イタリア語、ドイツ語、そして英語が綺麗。
わたしの好きな音感、正確だけどちょっとフラット気味、なんだ。
それから、仕舞ってはまた出してちょくちょく聴いていた。
あの日まで。
2008年、覚醒剤取締法違反で逮捕された。
2009年、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決だった。
2010年から活動を再開したらしい。
わたしは芸術家っていうのは人並みじゃないから、変人がいーっぱいいることは頭では理解している。
モーツアルトなんか精神的にやばい人だったと勝手に断じているし、ゴッホともベートーベンとも絶対、友だちにはなれない。
でも、かれらの作品は極上であることはよーく分かっている。
わたしはジョンがどんな人間なのか、書いてあるものやテレビでしか知らない。
でも、好青年で一人娘を愛し可愛がっているよいお父さんでもあるように見えた。
なのに、覚醒剤だなんて。
裏切られたように思った。
それから13年、仕舞いこんでいたCDをわたしは何故、また聴いてみようと思ったのか、自分でも分からない。
さっき、ネットで調べたら、いろんな国でテノール歌手として活躍しているようだ。
お嬢ちゃんもティーンエイジャーになったのかしら。
そんなことを考えながら、艶やかな彼の若き日の声を聴いている。