二日酔い
まだ、お酒が残ってる。
昨夕、自転車で15分ほどのお寿司屋さんへ行った。
まだ5時ごろでお客の数は少なかった。
ところが次第に予約のお客さんが来て、あれよあれよという間に2階までいっぱいになった。予約なしのお客さんは断ってた。
予約入れておいてよかった。
わたしたちはカウンターの真ん中で、パーテーションの左に水商売っぽいお兄さんが1人、右にわたしたちより少し年配のご夫婦がお通しでお酒を飲んでいた。
両方とも常連さんみたい。
相方がタバコを出して、右側の奥さんに「吸ってもよろしいですか」と訊ねた。
「どうぞどうぞ、わたしも吸いますから」とタバコケースを出した。
寿司屋の女将さんが今日のグジ(甘鯛)は大きくて美味しいですよ と彼女に勧めていた。奥さんは「そんなにぎょうさん、食べられへんわ」と言いながらも、勧められるままに大きなグジを焼くよう頼んだ。ほんとに大きかったんだよ。2人連れに勧めるサイズじゃないのに。
ロマンスグレーのご主人は奥さんが話すのをニコニコと、ひたすら聞いていた。
どっかで見た光景だな。あ、うちだ。ロマンスグレーもニコニコもないけど。
グジが焼けるまでと、てっさ(河豚の薄造り)を注文されたので、相方が「うちもてっさ」と言った。それから、相方は奥さんの向こうに座っていたご主人に話しかけ、奥さんはわたしに話し始めた。そのうち四人でおしゃべりしていた。
しばらくして、わたしたちがそろそろ帰ろうかと言っていると「帰り道だし、うちに寄って行きませんか」とご主人が誘って下さった。奥さんも寿司屋の大将に「うちでちょっとつまめるもの、なんでもいいから作って」と言い、相方はご主人ともっと話がしたかったみたいで、めずらしく「じゃあ、おじゃまします」って言ったんだ。
わたしたち2人は自転車を押して、4人でOさんちへ。
ご主人はこの辺の旧家の次男坊さんで、古いけど広ーい家だった。
お金もどっさり持ってらっしゃるみたい。
ご主人は刀を2,3振り持ってきて、それを相方に見せてらした。相方も何振りか持ってるんだ。彼の趣味の1つだ。
男たちが刀で盛り上がってる横で、わたしは奥さんのお金持ち自慢を聞いていた。
百貨店の外商がやって来て、いろいろ勧めるので、うるさいから買ってやった とか、1人娘さんがご主人の仕事の都合で九州に住んでらして、孫を連れて大阪へ帰ってきた時は、下着から服まで全部、買ってやるんだとか。
聞いてるわたしは、何故か、ちっとも羨ましいとも嫌だとも思わなかった。
あそこまで身も蓋もなく自慢されると、感覚が麻痺しちゃう。
彼女は買うことより自慢することが楽しいんだろう と分かってきた。
その間にもビールをジャンジャン開けて注いでくれる。
ご主人はお洒落なセーターを着てたけど、奥さんは着古したセーター着てたよ。
外商に買わされた洋服はたんすにしまったままなんだろうか。大きなダイヤの指輪は金庫の中なのかな。
8時から12時ごろまで。
不思議な経験だったなあ。
お陰で二日酔いだ。