一期一会
今週のお題「お気に入りのTシャツ」
わたしが20代後半で、バリバリ仕事してた(つもりの)ころだ。
わたしの実家から通勤に使っていた駅まで歩いて15分くらいかかった。
駅の手前に商店街があり、その周辺にも結構、いろんな店があった。
そのうちの1軒はまだ新しかったが狭く、外から見てもちょっと変わった感じの女性服の店だった。
ある日の会社帰りに、ひょこっと覗いてみた。
やはり、あのあたりの洋服屋とは趣の違う店だった。
それに当時のわたしには結構、値段が高かった。
でも、その店のテイストはわたしにピッタリ来た。
特に目を引いたのは少ーし大き目で、ゆったりしてるけど、ダブッとはしないTシャツだった。
白地の綿ジャージに抽象的な柄が、前身ごろほぼ全体に入っていた。
朱色、濃い緑、濃い紫などの個性的な色の、とんがった葉っぱの様な、荒れた波の様な形のものが描かれていた。
見れば見るほどわたし好みだった。
「これはどこのTシャツですか」と訊くと「ミチコ ロンドンって言います」
「小篠さん関係ですか」「はい、一番下の方だそうです」
40年前、わたしが初めて目にしたミチコ ロンドンの製品だった。
えいやっと、有り金はたいて買った。
それから一体、何十回着た事だろう。いや、100回は越えてるな。あのTシャツをジーンズの上に1枚着るだけで、他のアクセサリーは必要なかった。真夏の太陽を撥ねかえしてくれた。わたしに元気をくれた。
洗濯を繰り返し、色が褪せても、渋みが出て良かった。
さすがに20年くらい経って、引き出しを整理した折に、泣く泣く捨てた。
あれ以降、あんなに惚れこんだTシャツはない。
一期一会のTシャツだった。