市場

子供のころ、近くに小さな市場があった。

手前に簡単な柵がしてある原っぱがあった。この原っぱを通らずにぐるっと回ると5分近くかかる。柵の下をくぐって原っぱをまっすぐ行けば3分で行ける。

だから、いつもこの原っぱを通っていた。

時々、簡単なお買い物を言い付かった。ネギが多かったな。

母に渡された1円玉を3つ握って、裏口から出て真っすぐ南へ。

原っぱを抜けて市場へ行き、入って何軒目かの左手の八百屋さんで「おネギ」と言って3円払い、4分の1サイズに切った新聞紙に包まれたネギを、しっかり持って走って帰った。

物忘れし易くなってきているのに、何故かネギが3円だったことは覚えている。

わたしが結婚した頃はネギは15円だった。今や消費税込みで200円以上したりする。

結婚した頃、つまり40年ほど前は、大阪にもまだ沢山の市場があった。買いたい物に合わせて市場を選べた。八百屋さんで玉ねぎを使ったホワイトソースの簡単な作り方を教えてもらったり、魚屋さんで初めて見たウオゼの食べ方、焼いて酢醤油をかける、を聞いたりした。

実家の近くの市場はわたしが結婚した頃、つぶれた。

それから、大阪の市場も徐々に減っていき、スーパーマーケットになったり、宅地になって建て売りが建ったりした。

 

今はスーパー1ヶ所で全部買えちゃうし、作り方、分からなきゃクックパッドで調べられる。

便利だ。特に今のように人と接触しないほうがいい時は。

でもね、わたしのようにアナログタイプの人間は、何だかつまんない。

ユニクロみたいにお金を払うのまで機械でさせられるとねぇ。この会社は客にすべてさせて、機械に「ありがとうございました」と言わせる。感謝の気持ちなんかこれっぽっちも持ち合わせていないんだろう って感じがするよ。

 

便利なのはいい。でも、市場が懐かしいのは年のせいだけだろうか。