花嫁の瞳
もうすぐ6月も終わる。
6月の花嫁、ジューンブライドは、西洋では6月が女性と結婚生活の守護神、ジュノーの月だから、6月に結婚した女性は幸せになるという言い伝えによるものらしい。
それと、西洋の6月は日本の五月晴れに当たる天気のよい日が続くからだとも。
今まで結婚式に何十回、出ただろう。
自分が30前に結婚するまでに出席した回数の方が、結婚してからより多いかな。
結婚式の写真もいっぱい、見た。
みんな、にこにこと晴れやかで、あー、いいよね。幸せのお裾分けしてもらえる。
花嫁はみんな綺麗だ。お化粧やドレスではなくて、内から幸せのオーラを出しているから。
口角はゆったりと上がり、瞳は愛する人を映してうっとりと潤んでいる。
これは2人の花嫁の瞳の物語だ。
1人目の花嫁はわたしの友達で、それはそれはよくできた人だった。
見た目もいいし、仕事も出来る、家事もてきぱきとこなす。わたしがお嫁さんにほしいくらいの素晴らしい女性だった。
彼女が選んだ相手は10近く若い、カッコいい男性だった。でも、当時は無職だった。
牧師の前での誓いが済んで、新郎が新婦のベールを上げた。
彼女の目。
恐ろしく真剣で真摯で、彼に向って真っすぐ、ものすごいビームを発し、そのくせ、すがり付くような粘っこい視線。
あんな目をした彼女は後にも先にも見た事ない。
結局、3年で離婚した。
2人目の花嫁はお知り合いの娘さん。
ハワイで挙げた結婚式の写真を見せてもらったことがある。
ほっそりした華やかな女性。
彼女のお相手はきりりとした男前。ただし、バツ3。
十字架の前で向き合った写真があった。
ハッとした。
花嫁のその目に見覚えがあった。
あの時の友達と同じ目をしていた。
嫌な予感は的中した。子供が出来て、しばらくして離婚したと聞く。
結婚式はいい。披露宴も大好きだ。
何度でも出席したい。
でも、もう2度と、あのような瞳をした花嫁は見たくない。