後手後手

大好きな「もの」や「こと」が、大好きと言い難くなったことはないだろうか。

わたしにはたくさん、ある。

 

仲良しだった友人の心ない仕打ち。アレルギーで食べられなくなってしまった鯖。テレビショッピングで買った初めだけ研げていた包丁研ぎ。図書館で大きな袋にいっぱい借りて読んでいたのに、老眼と乱視で読みづらくなってしまった本。スーパーに様変わりして買い物がつまらなくなった市場。低電力で動きカッコよかったのに、すぐつぶれた扇風機、・・・・。

数え上げたらきりがない。

 

でも、1番は京都だ。

高校生のころから、友人たちと年に1、2度、京都へ行った。

今のように観光地化されていなくて、地図を片手に、人に訊きながら歩いた。

四条で食べた宇治金時。恐る恐る入った湯豆腐屋の親切な女将さん。そして、雪の嵐山の枯野道。いろいろな所に京都の風情があった。

今、京都は国際的な一大観光地となった。風情もへったくれもない。人、人、人。

30年ほど行っていない。この3年は、俳句の吟行が4回と、さと子ちゃんに会いに3回、京都へ行ったけど、目的があってのこと。最後に京都を楽しみに行ったのはいつだろう。

京都だけじゃない。日本中の街や町や村に観光客が押し寄せている。

 

わたしが若いころ、日本は工業国だった。淀川の水はソース色になり、煙突は毎日、膨大な量の煤煙をまき散らし、様々な公害が出た。ようやく、国が規制に乗り出し、少しずつ良い方向に動き出した。半世紀ほど経った今、淀川はきれいになって、ウナギも獲れる状態になったらしい。多くの企業は工場を人件費の安いアジア諸国に建設した。

 

今回の新型コロナ肺炎に関して、よく取り上げられるのは観光関係の話だ。

世界遺産」なんて番組が毎日曜の夕食時に放送され出したころ、もう日本は世界に冠たる観光国だったんだ。

熊野古道の苔が、観光客が歩きすぎてなくなりかけるとか、嵐山の店々は観光客のゴミの処理に手を焼いているとか、日本の観光地はもう、ソース色になってる。

 

儲かりゃなんだっていいの?国は観光に規制をかけないと、観光資源もそれに係わる商業も、みんなアウトになっちゃうよ。

コロナが終焉したら、1番に考えることの1つだ。

 

もう、後手後手はやめてくれ。