夜の火事

深夜1時。

寝る準備をしているとサイレンの音がした。続けてカンカンと鐘の音も。

近付いて来ている。それも数が増えてきている。

相方がベランダへ出た。

「おい、すぐそばの賃貸に消防車が集まって来てるぞ。」

 

うちのマンションの10メートルほど南東にある、2階建て6軒の建物だ。

フル装備の消防士が2人、表の階段を上がって奥の部屋のドアを開けたところだった。

他の5、6人の消防士はガス給湯器を調べているようだった。

細い道と表通りに8台以上の消防車が止まっている。

現場近くの消防車からは太いホースが引き出された。

赤い回転灯の光を受け、ホースは八岐大蛇のように見えた。

何と禍々しいことか。

 

ところが焦げ臭いこともなければ、煙も見えない。

結局、10分ほど見ていたが、それ以上何も起こりそうにないし寒いのでベッドに戻った。

 

昼間、居間から見える知人宅の火事に煙で気付いて通報したことがある。

夜の火事は煙は見えにくいが、火が赤々と恐ろしい。

 

たいしたことがなかったようで、ほんとによかった。

火事は同時に人生まで燃やしてしまうことがあるのを知ってるので。