わたしのほしいもの
ほしいものは、いーっぱいある。
色白のきれいな小顔、華奢な身体つき、優しい心、賢い頭、並外れた才能(何に関するものでもいいから)、そしてこれらに付随するもの、中身も見た目も素敵な彼氏、かわいいスカートやワンピース、正しい判断、ひとの称賛など。
でも、一番ほしいのは認知症にならない、もしくは治す薬だ。
他にも怖い病気はたくさんある。でも、この病気は命は取らないが、人間としての尊厳を失わせるという恐ろしい毒を持っている。今の母は以前の母とは全く違う人間になってしまった。たくさんのお医者様が日々、研究開発なさっている。いつかきっと、薬はできると信じている。
ほしいものは、いっぱいある。
でも、今のわたしでいい。
わたしの数少ない、いいところは、ひとを羨ましがらないことかな。
いや、けっこう口では「いいなあ」「うらやましいなあ」と言ってる。
でも、嫉ましいとは思わない。
ということは、結構、今の自分で満足してるということだ。
相方はぶっきら棒だが間違いなくわたしを大事にしてくれてる。女にしてはごっつい身体に合う洋服を選ぶコツも分かっている。よい友達もたくさんいる。お金持ちじゃないけど食べるに困らない。好きな趣味も見つけた。今のところ、大きな病気も持っていない。
これ以上をほしがるのは、欲張りというものだ。