母と千円札

胃は今んとこ、大丈夫。

 

昨日は実家を訪ねた。応接間は母が寒がるので、台所でお茶した。母は相変わらず同じ事ばかり繰り返し訊く。「なんで私、こんなにひょろひょろやの?」「ママは来月で90才だよ。しんどくて当たり前」認知症はよくなりはしないからね。でも、昨日はご機嫌でよかった。持参したプリンを美味しいと、時間は掛かったが、全部食べてくれた。「このプリン、どうしたの?」「わたしが持って来たんだよ」この会話も5,6回、したな。

 

相方は実家の台所の換気扇のフードが年末から汚れたままになってるのが気になったらしく、マジックリンでこすってピカピカにしてくれた。まあ、口数の少ない人だから、身体を動かす方が楽というのもある。

母はプリンを食べている間、彼が掃除しているのをちゃんと見ていて、それを覚えていた。彼が手を洗いに行ってる間に、黙ってわたしの手に千円札を握らせた。見ていた叔母が「姉ちゃん、千円は失礼よ」と言ったら、母は財布からまた千円札を取り出し、わたしに。「はい、ありがと。後で渡しておきます」と笑ってカバンに入れた。

 

母がずっと使い続けている財布は札入れの部分が半分に折れ曲がるタイプだ。その曲がる部分に穴があいていた。

「ママ、来月の卒寿のお祝い、お財布にするわ」

 

帰りの車の中で、母が相方にくれた千円札出してみた。母がぎゅっと握っていたせいか、くしゃくしゃになっていた。

何だか不思議な気分がした。