医は仁術

水曜日にいつもの心療内科導眠剤の処方箋を書いてもらいに行った。

K 先生はいつも通りの穏やかな顔で「どうですか」と聞かれた。

わたしは日曜日に足の小指をぶつけて、火曜日に整形外科へ行き、こういうことがあり、この薬を勧められた と処方箋を見せた。どうせ導眠剤の処方箋をもらって下にある薬局へ行くから、整形の薬も一緒にもらおうと思って整形の処方箋を持ってきていたのだ。

K先生は処方箋を見て首をかしげ、薬の本を出し確認して、わたしにこう言われた。

「この薬は骨には直接、関わらない。飲んでも飲まなくてもどっちでも構いません」

買わなかったら処方箋代、損になる。でも薬代は無しですむ。だったら買わない。

「それと禁煙はするに越したことはないが、タバコと骨の回復とは関係ないよ」

 

結局、導眠剤だけ薬局で買って帰った。

整形の先生が何度も「薬、どうしますか。いりますか」と訊いていたのは、どうしても必要な薬ではなかったからなのだ。

医は仁術ではなかったのか。