ダンスと言えば
亡くなったMさんは帰国子女だった。そして、ダンスが上手だった。
30年ほど前だった。わたしの友達となぜかその時は相方も一緒に飲んでいて、2軒目に行った店がダンスフロアのあるところだった。
わたしは踊れないが、Mさんがせっかくだから踊ろうと言い出した。ほかの友達も、踊りはちょっと と尻込みした。
すると、相方が「では、僕が」と彼女の手を取った。
相方は不良だったので、ダンスホールへ入り浸っていたこともあったとは聞いていた。しかし踊っているところは見たことがない。
彼女が「じゃあ、ジルバを」と言い、2人はフロアに降りて行き、滑るように、まさに滑るように踊り出した。見ているわたしたちは目を見張り、口あんぐり。初めてなのに息ぴったり。
踊り終わった時には、見ていたお客さんたちもお店の人たちも拍手喝采。
彼女に「どこで習ったの」と聞くと「アメリカじゃ普通の学校でダンスの練習をさせるよ」と事もなげに言った。
それからMさんとわたしの相方は仲良しになり、彼女はわたしんちに泊りがけで遊びに来るようになった。
わたしが相方に「ダンス、教えてよ」と言っても生返事するだけ。ケチ!
まあ、教えるというのは違う才能だからね。
それにしてもすごかった。今も目に浮かぶ。