雲
今、正面の空はほぼ雲に覆われているが、わたしの頭の上あたりは、マンションのベランダの上の直線のラインまで青空だ。
見えている雲が非常に興味深い。
夏の入道雲はひたすら、もくもくと上へ伸びてゆく。
しかし、初冬の雲は横へゆっくり流されつつ、重なり、形を変えてゆく。
色も白からダークグレイまで、多種多様な無彩色。
傾いてゆく日は雲の翳で見えないが、雲の端の白を光らせる。
西の大阪港あたりに何本ものレンブラント光線が降り注いでいる。
雲は次第に沈んでゆき、下の雲の背中に次の雲が覆いかぶさり、またその雲の背中にその次の雲が。
その上の方はまだどのグループにも属さない小さな雲たち。
小さな影がこちらへ。
ああ、鳥だ。黒い影。羽根と脚。小さな十字架の様だ。鷺の仲間だろう。
と、マンションの屋上から別の方角へ、鳴き声と共に鴉が一羽、飛び立った。
大阪平野は西が海、残りの三方は山に取り囲まれている。
わたしの所から見えるのは南に紀北の山々、それに続く金剛山、葛城山、二上山で東から北へカーブし、信貴生駒の山並みの南の端くらいまで。
これらの山々は今、黒いシルエットで立体感がない。
対して、雲の厚み、奥行きの深さ。
もうすぐ大阪港の方から赤の色を徐々に濃くして夕焼けが始まる。
この雲たちにも緋色の裏地が付く。
その後の夜空、この雲たちは通り過ぎ行き、星を見せてくれるのだろうか。