月見
たくさんの方が昨日の仲秋の名月について書かれている。
わたしはこの1年半以上、吟行に行っていない。だから、概ね、過去の記憶を探ったり、想像を働かせて俳句を書いてきた。
15階にある家にいて目で見える季語は少ない。
だから、わたしは空にあるもの、太陽、雲、虹、月、星をよく詠んできた。
そして、昨日は8年に1回とも言われている仲秋の名月が満月となる日だった。
夕方、大阪の空はうっとおしい雲に覆われていたが、釣瓶落としの太陽が地平線間際で姿を現し、暗い街の地表近くを真っ赤に照らした。
その照り返しで奈良との境の暗い山腹に虹が見えた。
何という妖しさだ。
昔、繰り返し夢で見たどこか判らない異国の街の風景のようだった。
その後、数分で日は沈み、すとんと夜となった。
雲はそれほど厚くはないが、月を隠すには充分だった。
相方に「月が出たらお月見パーティーで一杯やろうよ」と誘っていたのだが、9時になっても月の姿は見えなかった。
しかし、10時くらいから、雲の後ろにぼんやり、月の影が見えた。
11時には雲の切れ目が大きくなり、わたしがお風呂から上がったころには丁度、月がまん丸に見えた。
大急ぎで寝ていた相方を起こし、2人でベランダへ出た。
2人とも裸眼でだったので、ぼんやり二重三重の月だった。
眼鏡を掛けて見直した。
ああ、いい月だ。
それから、ハイボールで月に乾杯した。
ヒマワリの種や韓国のり天をぽりぽり、つまみながら、わたしはどんな句を詠もうか考えていた。
綺麗に見えた満月もいいけど、雲の後ろの月の影もいいな、ミケランジェロの最後の審判の雲みたいだ、とか、あの大阪の街を異国の地のように見せた秋夕焼もいいな とかいろいろ考え楽しかった。
良宵であった。