ロマンス
ロマンス。
女が少しでも若く美しくあるためには不可欠だと思っているのは、わたしだけだろうか。
わたしのへの字口の一因はそこにある。
相方の辞書には「ロマンス」はない。
彼は付き合ってた40年前から「愛してる」「好きだ」を自分から言ったことは1度もない。
確かに関西弁には基本どちらも馴染まない。かろうじて「好きや」くらい。
彼はそれさえ言わなかった。
結婚式はロマンスの終着駅ではない。
そこから夫婦の愛は深まっていく。
と思っていたのに、深まっていくのは「同志愛」で、これはロマンスではなかった。
女は、いや、少なくともわたしは、ロマンスを摂取しないと、カスカスに干からびていく。
せっせとロマンティックなドラマを見て、心の保湿ケアをする。
もちろんお肌の保湿もぬかりなく。
でも、もう間に合わない。
日々、老化は進む。
欧米の夫婦たちは、よく「愛してる」と言い合う。
電話の終わりに、出かける前に、何の感情もなく、習慣として"I love you"と言う。
これはこれで保湿にはならない。
逆さまに相方のように普段まったく言わない人が、自主的に「好きや」とか「きれいや」とか言ってくれたら、ものすごく満たされるだろうに。
まず、そんな日は来ない。
仕方ないからドラマで我慢する。