フォトジェニックと記憶力

もうすぐ例のトヨタのにいちゃんがやって来る。

「ドナドナ」の曲が頭ん中で聞こえてる。

子牛ならぬ我がメルセちゃんがとうとう行ってしまう。

今のうちにメルセちゃんと写真を撮って来よう。

 

はい、撮りました。

メルセちゃんはフォトジェニックで、わたしはお邪魔虫だけど。

現像してアルバムに残したいんだ。

写真はパソコンの中に山盛り入ってるけど、本当に必要なものは現像してアルバムに仕舞ってる。パソコンのはなんかの拍子に消えちゃうんじゃないかと不安なのだ。

 

高校の時、物凄くこわい物理の先生がいた。

間違えると、授業をちゃんと聞いていないからだと叱られる。

当てられないようにみんな下を向いてた。

当時、50才前の独身女性で、紫色の服が好みで、あだ名は「紫式部」。

 

授業の内容なんて覚えてないけど、1つ記憶に残ってることがある。

彼女は夏休みにアフリカのどこかへ旅行した時に、写真を1枚も撮らなかったと言った。

「一般人がテレビの”兼高かおる 世界の旅”みたいに、全部、フィルムに残すのは良くない。日本人の旅行者はみんな首からカメラを提げて、現物を自分の目でしっかり見もせずに写真を撮る。わたしはカメラなしで行って心に焼き付けてきた」

要するに自慢なんだけど、一理あると思った。

 

でもね、年取るとドンドン忘れてしまうから、写真はある程度必要だ。

思い出すきっかけになるから。

 

ところが最近、子供のころに友達と撮った写真を見て、名前はおろか、どういう関係かも思い出せないことがあった。

 

そのうちメルセちゃんの写真見ても「この車の写真、何だろう」なんて日がくるよ。

 

それでも彼女がフォトジェニックであることは変わらないだろう。