傘
早い目にお昼を食べたはずなのに、家を出たのはギリギリだった。
月1の仲田君のHonuで髪をしてもらう日だったのだ。
家を出て鍵をかけ、エレベーターへ向かったところで、傘を忘れたことに気付いた。
昨日から天気予報とにらめっこしてた。にわか雨程度でたいしたことなければ傘なしのつもりだった。
今朝はきれいに晴れてた。しかし、スマホの予報は午後1時くらいから雨マークがズラリ。傘要るなと思い、出して置いておいたのに忘れたんだ。
エレベーターの前でちょっと迷った。
Honuは駅の高架下で雨はかからないし、うちのマンションの玄関から地下鉄の入り口(改札じゃないよ)まで信号さえうまくいけば1分。
あー、どうしよう。
でも、大雨だったらやばいな。
で、踵を返して、家へ戻り、鍵を開け、傘を持って再びエレベーターへ。
エレベーターはなかなか上がってこない。
あっちゃー。予定の電車に乗れるかな。
まあ、急いで行けば大丈夫だろう。
でも、こういう時に限って、信号は赤。
走って地下鉄の階段を下り、改札で握ってたICOCAをピッとしたあたりで、るるるるるる と発車の合図の音。
階段の一番下に着いたとたん、地下鉄のドアが閉まった。
それで、遅れますの電話入れようとして、今度はスマホ忘れてきたのに気付いた。
間に合うんなら取りに帰りたいが、もう、家に戻るほど時間はないし。
乗る予定だった近鉄電車の鶴橋発の時間が12時41分。
このまま、乗り継いで行けば、地下鉄鶴橋着は12時37分。
4分で地下から2階のホームまで行けるかどうか。
行くっきゃない。
一番前のドアが地下鉄鶴橋駅のエスカレーターに近い。そのドアのそばに立ち、鶴橋で開くなりエスカレーターを駆け上がった。改札を抜け、地下から地上への階段の途中でしんどくなり一息付き、それでも何とか上り終え、近鉄鶴橋駅へ。改札でピッとしてまた2階のホームへの階段をダッシュ。
目の前に八戸ノ里へ行く各駅停車が滑り込んできた。
間に合ったぁ。
電車が1分遅れだったみたい。
これで遅れずに美容室に行ける。
自分の頭を「よしよし」と撫でてやりたい気分だった。
Honuに着くなり「悪いけどお水、ちょうだい」
お水のおいしかったこと。
それから2時間半ほど、仲田君とおしゃべりしながら、ちらちら、外の様子を見てたけど、きれいに晴れて、雨は降りそうにない。
終わってお店を出る時に「傘、要らなかったなぁ」と愚痴った。
せっかく取りに戻ったのに単なるお荷物になった傘。
行きに駆け下りた家の最寄りの地下鉄の駅の階段を上り終えた瞬間、大粒の雨がどどどと降り出した。