鏡の中の老婆
顔の周りの白髪が2センチ以上になった。
鏡を見るのが怖い。
どんなに若々しい感覚でいようとしても、鏡を見るたびに自分が老婆であることを自覚させられるのだ。
いつもの仲田君の美容室は地下鉄や私鉄を乗り継いで行かなければならない。だからコロナ以降は行ってない。
で、4月の初めに、彼が元々店長をしてた美容室へ自転車で行った。3年ぶりかな。前はまだ、普通の美容師だったMさんが店長になっていた。大きな美容室なんだけど、お客さんはわたしともう一人だけ、対角線の位置にいた。少ししか入れないようにしてたみたい。
あの時はカットとカラーをしてもらった。
ずーっと前に自分で染めてみようとしたけど、ひどいことになっちゃったんだ。
だからカラーもプロ任せ。
Mさんはがんばってくれたんだけど、やはりカットの技術が仲田君には及ばない。
でも、まだ電車に乗りたくない。
しかし、鏡の中に老婆がいる。
相方は帽子でも被っとけと言う。
ばっかじゃないの。家ん中で帽子なんか被れるか。
だから、今日の午後、自転車で行ってきます。