元ライオン

昨日、久しぶりに相方とケンカした。

わたしがテレビのニュースに文句を言いすぎると言うのだ。

子を殺す親、親を殺す子、ルールを守らないでひとに大怪我させたり死なせたりしてしまう人、私利私欲のために動く政治家。ニュースには今の日本の悪い面、汚い所が満載だ。見ていると自然に「こんな人は人間じゃない」とか「死刑にすべきだ」とか言ってしまう。相方は「うるさい。聞こえない。いい加減にしてくれ」と言う。

機嫌よく夕食の用意をして、さあ食べようとすると、相方がテレビをつける。必ずニュースだ。まあ、ほとんどのチャンネルでニュースをしてるんだけど。

せっかくの美味しい夕食がまずくなる話ばかりだ。

相方はテレビや携帯、タブレットで1日、ニュースを追いかけている。

だから、せめてご飯の時くらい、もっと穏やかできれいな音楽や旅の番組を見ようよ、録画してるのあるから と言ってもノーと言う。

で、わたしがツンとして一言もしゃべらないでご飯を食べていると、チャンネルを替えて釣りの番組にした。わたしは普通にしゃべって、ご飯を終えた。

 

わたしはご存知(じゃない方もいらっしゃるだろうけど)の通り、女子校出身で、大学の時にコーラスクラブで定期演奏会のチケットを売るため、いろんな大学の男声合唱団と合コンした。その時に関西の国公立や有名私立の男子大学生たちと知り合った。彼らはつまんなかった。自分だって大した人間ではなかったが、大した人間じゃない自覚はあった。でも、大学紛争もしっぽの世代の彼らには何だかんだ言っても大学の看板しょってるようなところがあった。たぶん、どこか結構な会社に入って、今度は会社の看板しょって生きたんだろうな。

相方は中卒だ。高1の1学期の終わりに先生を殴って退学。それから波瀾万丈の人生が幕を開け、わたしと知り合った30過ぎにはちょっと変わった男になっていた。世情には通じているが、常識に欠けたところがある。背は高くないが、がっちりした身体つきで、ちょっと危険な匂いのする、わたしの見たことのないような男だった。わたしは会う前からバツイチの子持ちの人だと知っていた。恋愛対象外だったはずなのに、会ったその日から彼に憑りつかれ、結果、こちらから付き合ってほしいと言った。しかし彼は自分が傷つくのを恐れ、わたしから逃げ回った。逃げられると追いかけたくなるのが人の常で、それから、ほんと、いろ~んなことがあって、1年半で駆け落ちした。何年か経ったある日、昔のお友達が彼を訪ねてきた。その人がこう言った。

「奥さんはすごい。ライオンを猫にした」

 

その元ライオンが今やテレビのニュースなんてちっこいことでわたしともめるなんて。

なんだかねえ。