PTA会長

下の娘が小学校3年の終わりごろのことだ。わたしは小学校のママさんバレーボールチームに入っていたので、毎年PTAの保健体育委員をさせられていた。4月から新年度になるので、2月ごろから次の委員や役を決めるために、係の人たちが家々を回る。うちにも係の人が来た。彼女はわたしに今年も保体委員を頼みに来たのだが、たまたま相方がいたので「何でしたらご主人に保体の委員長をしていただけたら」と言い出した。すると相方はPTAのピの字も知らないのに「いや、同じするならPTA会長がいいな。もう、会長は決まっているんですか」なんて言ったのだ。係の人は「とんでもない。引き受けて下さる方がいなくて困っていたんです。是非、会長を」

という訳で、相方は1年だけという約束でPTA会長になった。わたしは止めたほうがいいと何度も言ったが「ひとが出来ることなら俺にも出来る」と、新しいおもちゃを手にした子供のように喜々としていた。

男性はこちらも新人の保体委員長と相方の2人だけ。元気盛りのママさんたちに1年間しごかれて、その後は地域のきまりで町会の役をさせられた。

彼はこれらの経験をもとに成長した。沢山の敵も作ったが、沢山のかけがえのない友達も作った。何よりも、人との付き合い方を学んだ。実家の工場で働いていたので、大きな組織の中で動いた経験に乏しかったのだ。

わたしはハラハラしていた。でも彼が粘り強く自分の意志を通してゆくのを見て、意外とリーダーシップとれる人だったんだと知った。

 

でも、もう2度とPTA会長はごめんだ。もう、ないけど。