技量

旅行から帰って、1週間になる。もうすでにいろんな事を忘れかけている。

書き残しておかないと。

 

上高地を選んだのは、俳句の種を探すためで、ハイキングはそのためにした。

2日目に河童橋から梓川左岸を明神池まで、帰りは右岸を歩いた。

2時間のコースを4時間かけてノロノロと、清水川が合流する薄暗い橋の底をのぞき込んだり、変な茸があれば写真に撮ったり、きれいな声の鳥がどこに留まっているのか探したりして進んだ。

 

帰り道の右岸の岳沢湿原辺りの木道を歩いていると、一枚の木道を斜めに梅干し位の大きさの黒い糞が沢山落ちていた。近寄ると臭い。奈良で鹿の糞の臭いは経験済みだが、それよりうんと臭い。これは肉食動物の糞だ。わたしの頭に「熊注意」の立て札がうかんだ。写真に撮った。

インフォメーションセンターへ行くたびに、植物や鳥の名前を訊いたりしていた、いつもの親切な女性に、この写真を見せた。

「熊じゃありませんか」

彼女は何とも言えないような顔をして「サルです」と言った。

安心したような残念なような気がした。

 

これを俳句にする技量は今のわたしにはない。