ダークダックス
本日、午後3時からすみちゃんの立ち飲み屋さんが再開すると聞き、相方は友だちと行くという。「ずるーい、わたしも行きたーい」と言うと「今日はちょっとソフトボールの話があるから」ってさ。「じゃあ、すみちゃんにシクラメンの鉢植え買って、わたしからって持って行っといて」「OK」って出てった。
すみちゃんは相方の同級生の妹さんで韓流美人だ。
わたしの定義する「マドンナ」の1人だ。
以前に「マドンナ」について詳しーーく書いた。
わたしの「マドンナ」の定義は本来はいろいろ項目がある。
しかし、細かい所、全部すっ飛ばして言うと2つが重要。
まずは容姿。次が「愁い」である。
すみちゃんは立ち飲み屋をひとりで切り盛りしてる。
今からなら、おでんはいつもあるが、あとは大鉢に自分で作ったお惣菜を盛り、カウンターに並べている。炒め物やグラタンを作ってくれたりもする。あとは小袋に入ったピーナッツやおかきなどの乾きもの。
客の注文のビールや焼酎などを出す合間に「すみちゃんも1杯、飲みや」と言われると、ビールだったりハイボールだったりを入れて「いただきます」と飲む。強い。
手が空くと生ビールの四角い器械の陰で煙草を吸う。
何しろ安い店なので、年金暮らしのじいさん達は開店の3時からビール1杯で粘り、夕方になると仕事帰りの若い衆が顔見知りに愚痴を言いながら飲む。
L字型のカウンターは長い方に5人、短い方に1人、せいぜい6人が限度だ。
だけど、みんな身体を斜めにすると、もう何人か余分に入れるスペースができる。
これを「ダークダックス」と言う。
分かんない人は若いってこと。
みんな、すみちゃんのファンだ。男たちを慰めたり、叱ったりしながら、店を続けてきた。大きな口開けて笑ったり「あんた、飲み過ぎや。もう帰り」と追い返したり。
いつも明るい人だけど、時たま、ふっと暗い表情をする。
彼女、結婚してるんだけど家庭の話を一切しない。
コロナからこっち、ずっと店を閉めてたんだけど、彼女は元気かな。
お店は前とあまり変わらないだろうけれど、カウンターにパーテーションはしただろう。
もう、ダークダックスはできない。