武士の一言

今週のお題「爆発」

 

31日の火曜日、相方が監督しているチームが練習試合しているところへ、例のE監督がやってきた。E監督のNチームは今はあまり強くないが一応、ソフトボールの全国のリーグへ繋がっている。相方はこのチームのメンバーでもあり、今年からみんなに推されてキャプテンをしてきていた。

 

E監督は感情的な人で、すぐ腹をたてて怒鳴ったりして、チームのメンバーから尊敬されたり愛されたりするタイプではなかった。

相方はキャプテンとして頑張りつつ、監督からメンバーを守る盾にもなってきた。

「そんな言い方せんでもいいですやん」

「感情的にならんといて下さい」

何度もE監督を諫めてきた。

ハイシニアのチームだ。平均年齢は73、4歳じゃないだろうか。

いい歳した男達が楽しみにきているはずなのに、E監督のせいで気分を悪くしている人は沢山いる。

相方も何度も何度も嫌な思いをしてきている。

それでも引き受けた以上、1年はやるつもりだった。

 

しかし、31日の相方の監督をしているチームの練習中にやってきたE監督は「ボールの数が足らへん。ちゃんと管理しとんのか」と言ったらしい。ボールはE監督が保管しているのだから、数を確認できるのも管理すべきなのもE監督なのに。

「まったく面倒見きれへんわ」とE監督が吐き捨てるように言った。

 

このひと言で相方が切れた。

「面倒見きれへんのはこっちの方です。今日を以って退部させてもらいます」

 

それから、帰ってきてわたしにその話をした。

「今年一杯はキャプテンするつもりだと思ってたけど、辞めるって言ったんなら辞めたら」

「急にやめたらほかの人に迷惑が掛かるやろけど」

「何言ってんの。辞めるって言って、引き止められて、また辞めるって言うなんてやめてよ。武士の一言だよ」

 

こっちは前日の2度目のワクチン接種で、熱っぽいし頭痛いし だった日だ。

 

翌9月1日、彼は水面下で何かゴソゴソ動いてた。

 

昨日、9月2日の午前中にLINEでE監督以外のメンバーに「8月31日を以って退部いたしました。在籍中はたいへんお世話になり 云々」というメールを打ったらしい。

相方の携帯、鳴りっぱなしだった。

仲の良いメンバーには前もって話をしてたらしいが、「わたし」はほんとに辞めた話は聞いてなかった。

 

夕食中も携帯にメールや電話が入る。

せっかくの特製シーザーサラダもほったらかし。

わたしが自分の分を食べ終わったころに、相方がテーブルに戻ってきて冷蔵庫からビールを出して「実は」と話し出した。

「昨日から何かゴソゴソしてるなと思ってたら、やっぱりね」と言うと

「気、付いてたんか」

「わたしを誰だと思ってんの。でも、よく思い切ったね」

「武士の一言や」

 

それ、わたしが言ったんですけど。