お手々
相方が昨日の夜中、寝言で何かぐつぐついってるなと思ったら、突然、大きな声で言った。
「お前っ!」
その後は不明瞭で聞き取れなかったが、怒って文句を言っていることは分った。
彼をゆすって「夢だよ。嫌な夢見てるよ。一回、起きて」と言った。
目を開けて「うん、分った」と言い、また眠った。
しばらく様子を見ていたが、大丈夫そうなのでわたしも寝た。
実は、彼は例の不出来な監督のせいで、またもや嫌な思いをしたのだ。
キャプテンの相方は、メンバーから次の日曜の試合の対戦3チーム名を聞かれたので、監督にスマホのLINEで教えてほしいと何度か頼んだ。既読になっているのに1日、返事がなかった。
やむを得ず、よそのチームの監督さんに教えてもらい、みんなに伝えた。
わたしにはこぼしていたが、ほかのメンバーには監督の悪口は言っていないはずだ。
それがお腹にたまってて、夜中に爆発したんだろう。
かわいそうに。
寝室にシングルベッドを2つ、くっつけて置いている。
彼は眠る前に、時々「お手々」と言う。
わたしは右手を出して彼の左手を握る。
そのまま、わたしは音量を下げたテレビを見ている。
しばらくすると彼は手を放し、わたしのパジャマの袖口を握る。
いつの間にか眠っている。
マザコン男と思いつつも、愛しい。